知的障害のお子さんの将来を支える「障害年金」の基礎知識
はじめに
知的障害のあるお子さんを持つご家族の多くが、将来の生活について不安を抱えていらっしゃることでしょう。
「この子が大人になったとき、生活していけるだろうか」「経済的にはどうなるの?」そんな心配を抱えている方に、ぜひ知っていただきたい制度があります。それが「障害年金」です。
障害年金って何?
障害年金は、病気やケガで生活に支障がある方を経済的に支える国の制度です。知的障害も対象になります。
知的障害の場合の特徴
- 20歳から受給できることが多い
- 生まれつきの障害でも対象になる
- 本人が保険料を払っていなくても受給可能(20歳前からの障害の場合)
20歳になったら申請できる理由
知的障害は多くの場合、生まれつきや幼少期からの障害です。そのため「20歳前傷病による障害基礎年金」という制度が適用されます。
この制度のポイント
- 20歳の誕生日から受給開始
- 本人の年金保険料の支払い状況は関係なし
- ただし、本人の所得が一定額を超えると減額される場合がある
受給できる条件は?
- 障害の程度
障害年金には1級と2級があります
1級:日常生活で常に誰かの助けが必要
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- 食事、入浴、着替えなどに常時援助が必要
- 年金額:月額約8万4千円(2024年度)
2級:日常生活に著しい制限がある
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- 一人でできることもあるが、生活は非常に困難
- 働いて収入を得ることが困難
- 年金額:月額約6万7千円(2024年度)
- 判定の基準
知的障害の場合、IQ(知能指数)だけでなく、以下の点も総合的に評価されます
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- コミュニケーション能力
- 身の回りのことができるか
- 問題解決能力
- 社会性
よくある疑問にお答えします
Q1. 療育手帳があれば必ずもらえる?
A1. 療育手帳と障害年金は別の制度です。療育手帳の等級と障害年金の等級は必ずしも一致しません。ただし、療育手帳は参考資料として活用されます。
Q2. 作業所で働いていてももらえる?
A2. はい、可能です。働いていることだけで受給できなくなるわけではありません。仕事の内容や必要な支援の程度なども考慮されます。
Q3. 親が代わりに手続きできる?
A3. もちろんです。知的障害の場合、多くは親御さんが手続きを行います。
申請の流れ
- 準備期間(20歳になる2か月前頃)
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- 年金事務所や市区町村の窓口で相談
- 必要書類の確認
- 書類の準備
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- 診断書:精神科の医師に作成してもらう
- 申立書:生まれてから現在までの様子を記載
- その他:住民票、戸籍謄本、所得証明書など
- 申請・審査
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- 書類を提出
- 3~6か月程度で結果通知
診断書作成のコツ
医師に診断書を依頼する際は、以下の情報を整理しておくと良いでしょう
- 母子手帳の記録
- 療育手帳の情報
- 学校での様子
- 日常生活の具体的な困りごと
- これまでに受けた支援の内容
社労士に相談するメリット
障害年金の申請は複雑な手続きです。専門家である社会保険労務士に相談することで
- 複雑な制度を分かりやすく説明してもらえる
- 必要な書類の準備をサポートしてもらえる
- 受給の可能性を高められる
- 手続きの負担を軽減できる
などの点でメリットが存在します。
まとめ
障害年金は、知的障害のある方の生活を支える重要な制度です。20歳という節目は、この制度を活用する大切なタイミングです。
「うちの子も対象になるかしら?」「手続きが難しそう」と感じている方も、まずは情報収集から始めてみませんか。一人で悩まず、年金事務所や専門家に相談することで、きっと道は開けるはずです。
お子さんの将来の安心のために、障害年金という選択肢があることを、ぜひ覚えておいてください。
この記事を書いた人

- 社会保険労務士
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はじめまして。社労士事務所フィル・エンドランの黒田隆治と申します。
私は障害年金のサポートを通して、生まれ育った地元・船橋、習志野の地域で暮らす皆さまの力になりたいと考えています。
障害年金の申請は一人で抱え込むと不安が大きく、途中で諦めてしまう方も少なくありません。
もし障害年金のことでお悩みでしたら、どうぞお気軽に当事務所へご相談ください。
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